「IT導入補助金でホームページを作りたい」——ここから間違っています
よくいただくご相談です。ただ、残念ながらこの時点で2つ間違っています。
1. IT導入補助金という名前は、もうありません
2026年度から 「デジタル化・AI導入補助金」 に名称変更されました。予算規模も拡充され、生成AIを含むツールの導入が明確に位置づけられています。制度の中身も変わっているので、去年までの情報で考えていると話が合いません。
2. そもそも、この補助金でホームページは作れません
名前が変わったこと以上に大事なのがこちらです。通常のホームページ制作は、補助の対象外です。 この補助金が対象にしているのは、公式に登録されたITツール(会計ソフト、受発注システム、在庫管理、予約システムなど)の導入費用であって、サイトのデザイン・制作費ではありません。
ECサイトや予約システムなど業務プロセスを含むサイトなら対象になる余地はありますが、その場合も登録済みのITツールを使うことが前提です。さらに申請は「IT導入支援事業者」として登録された事業者と共同で行う必要があります。 「コーポレートサイトを新しくしたい」という目的では、まず通りません。
ホームページなら、現実的なのは「小規模事業者持続化補助金」
では何が使えるのか。中小企業・小規模事業者がホームページに使うなら、小規模事業者持続化補助金がいちばん現実的です。 経営計画にもとづく販路開拓の取組を支援する制度で、その対象経費のひとつに「ウェブサイト関連費」があります。
「うちの業種は対象?」——業種は関係ありません
いちばん多い誤解がここです。対象かどうかを決めるのは業種ではなく、「何をやるか」です。 この補助金が支援しているのは 販路開拓、つまり「新しいお客さんを開拓する取組」だからです。
ホームページも同じです。サイトは目的ではなく手段。「何を売るためのサイトなのか」が説明できないと、対象経費に当てはまっていても交付されません。
同じ業種でも、通る計画と通らない計画があります
| 業種 | 通りにくい | 通りやすい |
|---|---|---|
| ヘアサロン | 今のホームページを新しくしたい | 訪問美容を始めるので、その告知のLPとチラシ/ヘッドスパの新メニュー導入に合わせた専用ページとチラシ |
| マッサージ店 | 店舗紹介のサイトが欲しい | 訪問マッサージを始めるので、予約サイトとチラシ/新しい施術メニューの機器導入と告知 |
| 不動産会社 | 物件情報サイトを刷新したい | 空き家買取・相続相談を新しく始めるので、専用LPとチラシとセミナー告知 |
違いは「新しく何を始めるか」があるかどうかだけです。サイトの中身が同じでも、この一行があるかないかで結果が変わります。
お手本になる採択事例
中小企業庁が紹介している事例が分かりやすいので引用します。ある焼き鳥店は、味噌味の焼き鳥を商品化し、生産体制のために業務用グリルを購入。新商品をPRするパンフレットを作り、広告用のホームページを公開して、リスティング広告で集客しました。
実際に採択されたヘアサロンの事業名も、「新サービス(訪問美容)で高齢の施設入居者を笑顔にする」「炭酸水のヘッドスパ・カラー・パーマで、髪と心を健康に」といったものです。どれも「新しく始めること」が主語になっています。
だから、最初の質問はこれです
当社がご相談を受けたとき、まずお聞きするのはサイトの話ではありません。
「何か新しく始める予定、ありますか?」
ここが「はい」なら、補助金の話ができます。「特にない」なら、正直に申し上げて補助金は難しいです。その場合は補助金を使わずに作ったほうが、待つ時間を考えると得なことが多いです。
いくら出るのか:45万円のサイトで、30万円
ここがいちばん知りたいところだと思います。ウェブサイト関連費は、補助金の額として上限30万円。補助率は2/3です。
| サイトの制作費 | 補助金 | 実質のご負担 |
|---|---|---|
| 30万円 | 20万円 | 10万円 |
| 45万円 | 30万円(上限) | 15万円 |
| 60万円 | 30万円(上限のため頭打ち) | 30万円 |
つまり 45万円がいちばん効率のいい金額 です。それ以上かけても補助金は30万円で頭打ちになります。 逆に言えば、45万円のサイトが実質15万円で持てる、ということです。
条件1:ウェブサイトだけでは、申請できません
ここが第20回からの大きな変更点です。ウェブサイト関連費だけを計上した申請は、認められません。 他の販路開拓の取組と組み合わせた事業計画が必要になります。
なおチラシ・パンフレット・看板などは「広報費」という別の区分で、こちらも補助金の上限は30万円です。区分が分かれているので、それぞれ狙えます。
| やること | 経費の区分 |
|---|---|
| ホームページ制作・EC・SEO | ウェブサイト関連費 |
| サイトやEC内で使う動画・写真の制作 | ウェブサイト関連費 |
| チラシ・パンフレット・看板 | 広報費 |
| SNS広告・ネット広告・運用代行 | 広報費 ※第20回から移動 |
特に注意したいのが最後の行です。第19回まではウェブサイト関連費に入っていたネット広告・SNS広告・運用代行費が、第20回では広報費に移りました。 去年の感覚で組むと、区分の不備で減額・対象外になるおそれがあります。
「サイト+チラシ」の組み合わせは使えるのか
よくいただく質問です。公募要領の書き方を見ると、この2つの区分にはそれぞれ独立して注記が付いています。
- 広報費 …「広報費のみの申請不可」
- ウェブサイト関連費 …「ウェブサイト関連費のみの申請不可」
禁止されているのは「広報費だけ」と「ウェブだけ」です。両方を組み合わせれば、どちらも「のみ」ではなくなります。 つまり「サイト+チラシ」は、条文の読み方としては成立します。
条件2:スケジュールが長い。制作は「来年」です
これを知らずに進めると事故ります。第20回のスケジュールはこうです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 〜2026年12月4日 | 事業支援計画書(様式4)の発行を商工会議所に依頼 |
| 2026年11月5日〜 | 電子申請の受付開始 |
| 2026年12月15日 17:00 | 申請締切 |
| 2027年3月頃 | 採択発表 |
| 採択・交付決定のあと | ようやく制作に着手 |
締切より先に、様式4の締切(12月4日)が来ます。ここを見落とすと、申請そのものができません。 また電子申請には「GビズIDプライム」アカウントが必要で、発行に10日程度かかります。逆算すると、11月には動き出している必要があります。
条件3:交付決定の前に着手したら、1円も出ません
これが最大の落とし穴です。交付決定の前に発注・契約した経費は、補助の対象外になります。
「採択されたら払うから、先に作り始めて」——これをやると、補助金が受け取れなくなります。 当社が「採択されるまで着手しません」と申し上げるのは、意地悪ではなく、お客様を守るためです。
当社ができること・できないこと
正直にお伝えします。当社は補助金の専門家ではありません。できることと、できないことがはっきりしています。
| できること | できないこと |
|---|---|
| お見積りを出す | 申請書類の作成代行 |
| 事業計画に合う制作内容のご提案 | 採択の保証 |
| サイトとチラシなどの組み合わせを一緒に考える | 制度の最終的な判断 |
| 商工会議所へお繋ぎする | 交付決定前の着手 |
申請の主役は、事業者ご本人です。公式の支援窓口は商工会議所・商工会で、事業支援計画書(様式4)もそこで発行されます。 当社の役割は、その計画に乗せられる見積と提案を用意すること。ここは得意分野なので、遠慮なくお使いください。
まとめ
「IT導入補助金でホームページ」は、名前の時点でもう古く、中身としても対象外です。 ホームページなら小規模事業者持続化補助金。45万円のサイトで30万円が補助され、実質15万円で持てます。 ただし大事なのは金額より「新しく何を始めるか」。サイトを新しくしたいだけでは通りません。 そして締切は12月15日、制作は2027年春から。ここを飲めるなら、使う価値は十分にあります。
SUMMARY
IT導入補助金は2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更され、そもそも通常のホームページ制作は対象外。HP制作に現実的なのは小規模事業者持続化補助金。対象かどうかは業種ではなく「新しく何を始めるか」で決まり、会社案内や既存サイトの刷新だけでは通らない。ウェブサイト関連費は補助金の上限30万円・補助率2/3のため、45万円のサイトなら30万円が補助され実質負担は15万円。ただしウェブ単独の申請は不可で、チラシなど他の取組とのセットが必要。第20回の申請締切は2026年12月15日、様式4の発行締切は12月4日、採択発表は2027年3月頃で、交付決定前に着手した経費は対象外となる。