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治具で「できる人」を増やす。3Dプリンタで作業効率と工賃を上げる、福祉施設の現場改善

3Dプリンタで作った作業用の治具

CONCLUSION

治具は、「一部の人しかできない工程」を「誰でもできる工程」に変える道具です。 できる人が増えれば生産量とスピードが上がり、それが 工賃アップ に直接つながります。

  • 実例では、1件あたりの作業時間が3分の1になり、不良も大幅に減りました
  • 3Dプリンタで内製すれば、現場に合わせて安く・早く・何度でも調整できます
  • 工賃が上がると、B型では事業所の基本報酬も上がる——経営にも効きます

なぜ「治具」が工賃アップの鍵になるのか

障害福祉サービス事業所(就労継続支援B型など)では、「工賃をどう上げるか」が共通の悩みです。 厚生労働省の令和5年度の実績によると、B型の全国平均工賃は 月額23,053円。決して高い水準とは言えません。

しかも工賃アップは、利用者のためだけの話ではありません。 B型の基本報酬は、前年度の平均工賃に応じて8段階に区分されており、工賃の高い事業所ほど高い報酬単価を受け取れる仕組みです。 つまり 工賃を上げることは、そのまま事業所の経営改善につながります。

治具(じぐ)とは、 作業のときに部品や道具の位置・角度・順番を固定し、「誰がやっても同じ結果になる」ようにする補助具のこと。 製造現場では当たり前に使われているが、福祉の作業現場ではまだ活用の余地が大きい。

工賃を上げるには、生産量を増やす必要があります。そのボトルネックになりがちなのが「特定の人しかできない、難しい工程」です。ここを治具で解消します。

治具があると、現場はどう変わるか

難しい工程に治具を入れると、現場では次のような変化が起きます。

治具なし治具あり
一部の熟練者しかできない初めての人でもできる
人によって仕上がりがばらつく品質が一定にそろう
確認や手直しに時間がかかる迷いが減り、スピードが上がる
その人が休むと工程が止まる誰でも代われるので止まらない

ポイントは、「できる人を増やす」という点です。作業に参加できる利用者が増えれば、それだけ生産量が積み上がり、工賃の原資になる生産活動収入が増えていきます。

【実例】袋を折って成形する工程に、治具を作った

実際に治具を作った事例を紹介します。袋を折って成形するという作業工程です。 (写真は掲載許可の都合で割愛します)

治具を入れる前にあった、3つの壁

言葉にすると「袋を折るだけ」の単純な作業に見えます。ところが現場では、次の3つが立ちはだかっていました。

  • 思った以上に、正確さが要る — 成形の精度が甘いと、製品として成立しない
  • 正確にやろうとすると、1件あたりの時間がかかる — 慎重に合わせるほど手が止まる
  • 不良が多く出てしまう — 作り直しが、さらに時間を奪う

つまり 「速くやると不良が出る、正確にやると遅い」 というジレンマです。 しかも難易度が高いぶん、担当できる方が限られてしまう。まさに前章で書いた「ボトルネックになる工程」そのものでした。

治具を入れたら、どうなったか

そこで、この工程専用の治具を作りました。結果は次のとおりです。

項目治具を入れた結果
成形のしやすさ迷わず、スムーズにできるようになった
1件あたりの時間3分の1に短縮
できる人難しそうだった方も、できるようになった
不良大幅に減少

いちばん大きかったのは 「1件あたりの時間が3分の1になった」 ことです。 位置合わせを治具に任せられるので、迷う時間も、慎重になるための時間も要らなくなりました。 正確さとスピードを、同時に手に入れたわけです。

そして、工賃アップにつながった

作業効率が上がり、こなせる件数が増えました。それはそのまま生産活動収入の増加となり、 障害福祉サービスの利用者の工賃アップにつながりました。

冒頭で「治具は工賃に効く」と書いたのは、この実感があるからです。 難しい工程を、誰でもできる工程に変える。たったそれだけで、現場の景色は変わります。

なぜ「3Dプリンタ」で内製するのか

治具は市販品もありますが、現場の作業は一つひとつ違うため、既製品がぴったり合うことはめったにありません。3Dプリンタで内製すると、次の利点があります。

1. 現場に合わせて“ちょうどいい形”が作れる

その工程・その部品専用の形を、必要な寸法で作れます。「あと2mm深く」「この角度で止めたい」といった微調整も思いのままです。

2. 安く、早く、何度でも試せる

試作を重ねてもコストが低く抑えられます。「作って、現場で試して、直す」を短いサイクルで回せるのが最大の強みです。

3. 壊れても、すぐ同じものを出せる

データが残るので、破損・追加・複数拠点への展開も、同じものを必要なだけ出力できます。

治具づくりの進め方(作業マニュアルとセットで)

治具は「作って終わり」ではありません。作業マニュアルとセットにすることで、誰でも同じように使えるようになります。進め方の目安は次のとおりです。

ステップやること
1. 工程を分解する作業を細かく分け、どこで人が詰まるかを洗い出す
2. ボトルネックを特定「一部の人しかできない」「時間がかかる」工程を選ぶ
3. 治具を設計・試作3Dプリンタで出力し、現場で試して調整する
4. マニュアル化写真つきの手順にして、誰でも使える状態にする
いきなり全工程を変えようとせず、「一番効果が出そうな1工程」から始めるのがおすすめです。小さく試して効果を確かめてから広げるほうが、現場にも定着しやすくなります。

まとめ

治具は、特別な設備投資よりずっと小さなコストで、「できる人を増やし、生産量を底上げする」現実的な一手です。 3Dプリンタを使えば、現場に合わせた治具を安く早く作れます。 それが生産活動収入を押し上げ、利用者の工賃と、事業所の報酬の両方に効いてきます。

SUMMARY

治具は「一部の人しかできない工程」を「誰でもできる工程」に変え、生産量とスピードを上げる。袋を折って成形する工程に治具を入れた実例では、1件あたりの時間が3分の1になり、不良も大幅に減り、利用者の工賃アップにつながった。B型では平均工賃(月額23,053円)に応じて基本報酬が8段階で変わるため、工賃向上は経営にも直結する。3Dプリンタなら現場に合わせて安く早く内製できる。まず効果の大きい1工程から始めるのがよい。

よくある質問

治具は、まず何から作ればよいですか?

「一部の人しかできない工程」から始めるのが効果的です。そこを誰でもできる作業に変えると、生産量のボトルネックが一気に解消され、工賃への効果も見えやすくなります。

3Dプリンタを持っていなくても依頼できますか?

可能です。工程を見せていただければ、治具の設計から出力・試作まで当社で対応できます。まずは「どの作業が難しいか」からご相談ください。

どんな作業が治具に向いていますか?

位置合わせ・角度出し・数を数える・向きをそろえる、といった手先の精度や判断が必要な工程です。治具で固定してしまえば、経験の差が出にくくなります。

治具は工賃アップに本当につながりますか?

作業できる人が増え、一人あたりの生産量とスピードが上がれば、生産活動収入が増えます。B型では収入が工賃の原資になるため、工賃向上に直結します。実際に、袋の成形工程に治具を入れて1件あたりの時間が3分の1になり、こなせる件数が増えて工賃アップにつながった事例があります。

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