ぼやけたロゴを見た人は、何を思うか
技術の話の前に、受け取る側の話から始めさせてください。ここがいちばん大事だと思っています。
配ったノベルティのロゴが少しぼやけていたとき、受け取った人は「このロゴ、解像度が足りないな」とは思いません。 そもそも、ぼやけていること自体に気づかない人がほとんどです。
代わりに、こう感じます。
- なんとなく安っぽい
- 手作り感がある(褒め言葉ではないほうの)
- ちゃんとした会社なのか、少し不安になる
厄介なのは、この印象が 言葉にならない ことです。 理由が意識に上らないので、相手も指摘してくれません。「なんとなく」の印象だけが、静かに残ります。
せっかく費用をかけて作るのですから、ここは押さえておきたいところです。
なぜぼやけるのか:画面用と印刷用は、必要な情報量が違う
「パソコンの画面ではきれいに見えたのに」——よく言われます。そのとおりで、画面と紙では必要な情報量がまったく違います。
| 用途 | 必要な解像度の目安 |
|---|---|
| ウェブサイト・SNS | 72〜96dpi |
| チラシ・パンフレット・ノベルティ | 350dpi |
| のぼり・看板などの大判 | 150〜200dpi(離れて見るため低めでよい) |
数字で見ると、はっきりします。横640pxのロゴを、トートバッグに幅10cmで印刷する場合——
- 実際の解像度は 約163dpi
- 印刷で欲しいのは 350dpi
- 10cm幅を350dpiで確保するには、約1,378px 必要
つまり、必要な情報量の半分以下です。画面では十分きれいに見えていても、紙にすると輪郭がにじみ、文字のフチがガタつきます。
実例:横640pxのGIFから、商品を作った話
あるお客様からロゴを支給いただいたとき、届いたのは 横640pxのGIF画像 でした。
GIFはウェブ表示用の形式で、扱える色数も限られています。拡大すれば当然ぼやけますし、そのまま印刷に回せる品質ではありません。
ただ、こういうケースは珍しくありません。「昔つくってもらったときのデータがこれしか残っていない」「元データがどこにあるか分からない」——本当によくあることです。 責める話ではなく、そういうものだと分かっていれば先に手を打てる、という話です。
このときは、ロゴを ベクター化 してから商品を作りました。結果、640pxの元画像からは考えられないくらい、輪郭のはっきりした仕上がりになりました。 同じことは、カレンダーやパンフレットにロゴを載せる案件でも何度かあります。
実際、どのくらい違うのか
お客様のロゴはお見せできないので、当社のロゴで同じ状況を再現しました。 左が「横640pxのGIFを幅10cmで印刷したときの状態」、右がベクターデータです。同じ大きさ・同じ倍率で並べています。
全体で見ると、そこまで違わないように見えるかもしれません。ところが拡大すると、斜めの線の輪郭がはっきり違います。 左はフチが階段状にギザギザになり、色の境目もにじんでいます。これが紙の上では「なんとなく安っぽい」という印象になります。
ベクター化とは何か
| ラスター(写真・画像) | ベクター | |
|---|---|---|
| 主な形式 | jpg/png/gif | ai/eps/pdf/svg |
| 拡大したとき | ぼやける・ギザギザになる | どこまでも滑らか |
| 向いているもの | 写真 | ロゴ・文字・イラスト |
| 色の変更 | 手間がかかる | 簡単 |
ロゴをベクターで持っておくと、こういう良いことがあります。
- 名刺の小さなロゴから、看板の大きなロゴまで、同じデータ1つで足りる
- 単色にしたい、白抜きにしたい、といった調整がすぐできる
- 刺繍やシルク印刷など、データの形式を指定される加工にも対応できる
つまり一度作れば、この先ずっと使える資産になります。毎回「使える画像を探す」ところから始めなくて済みます。
手書きのロゴや絵でも、ベクター化できます
これは意外と知られていません。紙に描いたロゴ、手書きのイラスト、昔のスタンプ——写真やスキャンさえあれば、それを元にベクターデータを作れます。
「手書きだから、きれいに印刷するのは無理だろう」と諦めていたものが、そのままノベルティやパンフレットに使えるようになります。 しかも手描きの線の味は残したまま、輪郭だけをくっきりさせることができます。
よくある「支給データあるある」
これまでにいただいたデータで、そのままでは印刷に使えなかったものの例です。
- ウェブサイトから右クリックで保存した画像
- 名刺やチラシをスマホで撮った写真
- WordやPowerPointの資料に貼られていたロゴ
- チャットアプリで送られてきた画像(送信時に圧縮されている)
- 画面のスクリーンショット
どれも原因は同じで、「元データが手元にない」ことです。 裏を返せば、元データさえ見つかれば一発で解決することも多いので、まずは探してみる価値があります。 拡張子が ai・eps・pdf・svg のファイルがあれば、それが本命です。
まとめ:データの質は、そのまま印象になる
ノベルティも印刷物も、作る前の「データ」の段階で仕上がりの上限が決まります。 そして仕上がりは、受け取った人が会社に対して抱く印象に、そのままつながります。
手元のデータが心もとなくても、諦める必要はありません。ベクター化という手が残っています。 横640pxのGIFからでも、手書きの絵からでも、きちんとした商品にできます。
SUMMARY
ぼやけた印刷物は「安っぽい」「ちゃんとした会社か不安」という言葉にならない印象を残し、それが商品への評価にも重なる。原因は画面用と印刷用で必要な情報量が違うこと。横640pxのロゴを幅10cmで印刷すると約163dpiで、印刷に必要な350dpiの半分以下になる。ただし元データがなくてもベクター化すれば解決でき、実際に横640pxのGIFから商品を制作した。手書きのロゴや絵でも同じで、一度ベクター化すれば名刺から看板まで使い回せる資産になる。